痴漢ゼロへ 進みはじめました。
2024年01月12日
私も参加する「神戸市東灘区ジェンダーしゃべり場」は2022年1月以降、共通テストをはじめ受験シーズンの痴漢防止、そして痴漢ゼロへ向けて通年の対策の抜本的強化を求めて、兵庫県の鉄道会社・事業者や県警、県当局に申し入れ、松本のり子神戸市議と私は県・市議会で取り上げるなど取り組んできました。
先月からも鉄道事業者や県警、県当局に3年目となる申し入れを行い、一歩一歩対策が進んでいると実感しています。とりわけ「迷わず110番!」ポスターによって警察への通報・相談件数が2倍近くに増えたのは、非常に重要な成果だと思います。
これまでの到達点をお伝えします。○印が実現・前進したことです。
●【兵庫の対策2022年】防止アナウンス実現 県警が最大体制で警備
東灘区の女性ノラさんの訴えを受けて2022年1月にノラさんと私、松本市議、西ただす市議が各鉄道事業者に、車内・駅構内でのアナウンスをはじめ、被害を訴えられない共通テスト受験生を狙う痴漢の防止と抜本的な痴漢対策を申し入れたのが始まりです。
また私は県議会各会派政務調査会という場で、県警に「受験生が狙われている。守らなくてはいけない」と訴え、当日の重点的な警備と鉄道事業者に痴漢防止のアナウンスなどを働きかけるよう強く要請しました。
阪神電鉄は申し入れの翌日に、駅構内・ホームでアナウンスすると連絡してきました。阪神電鉄が「痴漢」の言葉が入ったアナウンスは初めてとのことでした。県警も政務調査会の翌日、「議員の要請を受け、鉄道警察隊は車内に重点を置き、構内は各署に指示して人員を最大限配置します」と回答しました。
こうして以下が実現しました。
○共通テストの前に、阪神、JR、神戸市営地下鉄で、「迷惑行為や痴漢行為に遭われたとき、見かけたときは乗務員又は駅係員にお知らせを」(阪神)、「痴漢、盗撮は悪質な犯罪行為です。被害に遭われた方、見かけた方は110番または被害相談所に連絡を」(JR、市営地下鉄)というアナウンスが駅構内・ホームで実現(JRは車内アナウンス)。
○共通テスト後、神戸新交通(第3セクター)運営のポートライナー、六甲ライナーでも行われました。
○県警は受験シーズンの対策強化の要請を従来の3鉄道事業者から9事業者に拡大し、アナウンスの雛形を鉄道事業者に提供しました。
○県警は共通テスト当日、地域の交番署署員も動員して車内、ホーム、駅内外を最大体制で警備。
(この頃のことは2022年3月2日のブログ「受験生狙った痴漢加害防止へ対策実現」に詳しい)
〇阪神、JR,市営地下鉄は上記アナウンスを共通テスト・受験シーズン後も毎日行い、今も続いています。
その後、私は県議会で機会あるたびに県警や県当局に対し抜本的な対策を求めて、様々な要求をしてきました。
まず、広報の内容です。多くの被害者が泣き寝入りして1割位しか通報しないと言われており、それは痴漢に関する広報が女性に自衛や注意喚起を求める内容が中心であることと結びついています。つまり、痴漢に遭ったのは注意しなかった自分が悪いとなって、通報に至らないという問題があります。そこで、「痴漢は犯罪。被害者には何の非もなく、加害者が100%悪い」という観点をはっきりさせて、通報を正面に据えた広報を行うよう一貫して求めてきました。
さらに体制の強化を訴え、共通テストをはじめ受験シーズンの特別対策はもちろん、根本的解決、性暴力根絶へ向けて人権尊重や科学的な性知識を学ぶ教育の課題等々を取り上げ、求めてきました。
一方、市営地下鉄や市バスを運営する神戸市交通局は最初の申し入れの時は「アナウンスすると男性客から文句言われるからできません」「バスには痴漢はありません」などさっぱりでした。松本市議が3月、4月の市議会で「痴漢は犯罪と言う認識があるのか。他の迷惑行為と一緒にしてはいけない」「神戸市が民間より遅れていていいのか」と激しく追及し、姿勢を変えていきます。
○こうして6月、松本市議や私の論戦が実り、県警と神戸市交通局が「チカンに遭ったら見たら 迷わず110番!」というポスターを共同で作りました。画期的な内容で、「うちの地域にも貼って」など全国から大反響がありました。このポスターとステッカーが市営地下鉄や市バスに貼られてデジタル画面表示もされ、県警によるSNS発信も行われていきます。同ポスター作成は1つの画期をなしました。
○6月の神戸市議会では松本市議の質問に、市交通局長が「交通局としては、痴漢を未然に防ぐのは責務と考えております」と答弁。当たり前のこととはいえ従来よりかなり前進した答弁を引き出しました。市交通局はようやく「痴漢は犯罪」という立場に立っていきます。
○県警は8月から女性の鉄道警察隊員を7人増員。私の議会での要求が実現しました。
●【兵庫の対策2023年】「迷わず110番」ポスターで通報・相談ほぼ倍増
2022年12月から23年初頭にかけて「神戸市東灘区ジェンダーしゃべり場」として前年に引き続き、共通テストをはじめ受験シーズンの特別対策と通年的な痴漢対策強化を各鉄道会社・事業者に申し入れ、私は県議会政務調査会で県警に要請しました。
1月に県警による以下の対策が実現・前進しました。
〇受験シーズン対策として県警が、県内で運行する11の全鉄道会社・事業者に車内の痴漢防止アナウンスやパトロールなどの対策を要請。
22年1月の県警から事業者への要請は当初3事業者、後に9事業者に拡大しましたが、23年1月は最初からローカル鉄道も含め全事業者に要請しました。また22年1月に実現したアナウンスは駅構内が多かったのですが、23年1月は駅構内とともに、より効果の高い車内アナウンスを要請。私や共産党県議団が求めていました。
○共通テスト当日は昨年に続き、鉄道警察隊に加え交番署署員も動員するなど最大体制で警備。
〇ツイッターで「迷わず110番!」のバナー付きで、通勤・通学の人向けと共通テスト受験生向けの2種類を発信。
私は政務調査会でSNS発信と広報を強く求めましたが、ほぼ提案通りに発信してくれました。
○JRなどで流される、女性に延々と注意喚起する県警作成の動画を次回更新時に改善すると約束。
私は22年9月の県議会本会議で、この動画では通報の妨げになる、通報を正面に据えたものに改善をと強く要求し、県警本部長が前向きな答弁をしていました。しかしこの動画は注意喚起を減らしましたが今も使われており、早く「被害者には何の非もなく、加害者が100%悪い」という観点を明確にして通報を呼びかけるものに変更が必要です。
その後、私は4月の県議選で落選。県議会で追及できなくなり、大分制約されますが、できる限りのことをやろうと活動しています。痴漢ゼロの公約を実現する活動でもあります。
○4月頃、県警が「待て 痴漢」という新ポスターを作成。
11月30日、県警に進捗状況のヒアリングと要請。
○このとき、「チカンに遭ったら見たら 迷わず110番!」ポスター・ステッカーを2022年6月に貼り出して以降、警察への通報や届け出は増えたか聞くと、県警側は次の数字を示しました。
電車内痴漢の通報・相談件数が
2022年1月~10月23件
2023年1月~10月43件
と1.87倍に増えました!
非常に大きな成果です。同ポスターの効果で、被害者や周りの乗客も声を上げる人が増えてきたようです。
●【兵庫の対策2024年】警察と訓練実施 高校入試も対策
2023年12月から24年初頭にかけて「神戸市東灘区ジェンダーしゃべり場」として各鉄道会社・事業者、県警に3年目の申し入れを行い、今回は県当局、県教育委員会にも申し入れました。
申し入れ項目は以下。
・「痴漢は犯罪です。痴漢に遭った時見た時はその場で110番通報、もしくは駅係員まで非常通報装置でお知らせを」とのアナウンスを駅構内だけでなく車内で日常的に
・神戸市交通局・県警作成の「迷わず110番!」ポスター・ステッカーを全鉄道会社が掲示・表示し、全国にも広げる
・被害が多い通勤・通学ラッシュ時に重点的パトロール
・共通テスト当日はじめ入試シーズンは、車内・ホームのパトロール強化など特別対策を
・痴漢発生に備え、鉄道事業者と警察が連携して駅員・乗務員に訓練の実施を
・女性専用車両の増設、車内防犯カメラの設置
・痴漢は犯罪であること、遭ったら見たら電車内でも110番通報していいことを学校で性別問わず伝える
・性加害も性被害も生まないための教育を
・再犯防止のために加害者更生プログラムを兵庫県としても実施を
・痴漢・性暴力根絶へ部局横断の「痴漢・性暴力根絶課(室)」を設置し、全庁的に対策の加速を
・盗撮も上記と同様の対策を
・わざと強くぶつかる行為は暴力であり犯罪であると積極的に広報を
――等。これらを鉄道事業者、県当局、県教委に求めるとともに、県警には鉄道事業者に要請するよう求めました。
今回は盗撮と、わざと強くぶつかる「わざぶつ」行為も対策を求めました。この「わざぶつ」行為の問題は1年前に意見をいただいた方が要望されていたことです。鉄道事業者や県警は受け止めてくれた印象です。
現時点(1月12日)で実現・前進した点。
○2024年の共通テスト・入試シーズンの対策
・県警は昨年に引き続き、県内11の全鉄道会社・事業者に車内の痴漢防止アナウンス、パトロールなどを要請。共通テスト当日も引き続き最大体制で警備。
・神戸市交通局(市営地下鉄)は、共通テスト当日や主な入試日は集中的に車内巡回し、主要駅の改札口に係員を配置して鉄道警察隊員とともに警備。高校入試日も痴漢対策を行う。さらに主な入試日は表現を工夫して車内アナウンスをする予定。
・阪神電鉄は共通テスト当日、入試シーズンは鉄道警察隊と連携し、車内など特別にパトロール強化。
〇県警はXの「クリスマスは痴漢チャンスデー」などの投稿に、「痴漢を誘発するおそれのある不適切な書き込みと認められます」と返信し、警告する取り組みを実施。
○神戸市交通局の広報 「あなたの協力が必要です チカンを見かけたら乗務員にすぐにお知らせください」と非常通報装置の説明をしているポスターを車内に掲示。地下鉄構内の大きな柱のデジタル掲示板に「チカンに遭ったら見たら迷わず110番!」も表示。
○阪神電鉄は取り組みが確実に進んでいるもよう
・通報を呼びかけるアナウンスの車内への放送を、ダイヤ改正時に検討したい。
・通勤・通学ラッシュ時の対策として、可能な限り運転手の他もう1人配置して通報時に対応できるようにしている。
・痴漢発生時を想定した訓練を警察と協力して実施している。
・全車両への防犯カメラの設置を進めている。
この間、申し入れた相手方から、勇気づけられる発言が出ています。
〇県警(23年11月30日):「皆さんからの色々な指摘や要望で、われわれ警察も認識が変わってきました」「不同意わいせつ罪で逮捕し送検するが多くは証拠不十分で不起訴。悔しい」「自分も娘を持つ親。頑張ります」
(23年12月27日):「めざすゴールは同じです」「(共通テストの特別対策を)今回もやりますよ」
〇阪神電鉄(23年12月22日):「2年前に申し入れを頂いて以降、私たちの意識も変わり、構内アナウンス始め啓発を進めてきました」
●全国は 政府「痴漢撲滅政策パッケージ」・東京都「痴漢撲滅プロジェクト」
全国的にはさらに大きな前進を見せています。
何と言っても、2023年3月に策定された政府の「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」です。
基本認識として「痴漢は重大な犯罪である」「痴漢の被害は軽くない」「被害者は一切悪くない」「被害者を一人にしてはいけない」「痴漢は他人事ではない」という5点を挙げており、極めて重要な観点です。内閣府・警察庁・法務省・文部科学省・国土交通省の省庁横断型で痴漢撲滅へ向けた施策を進めるとしています。本格的に進むならすごいことなので、注視しています。
これに至るまでには、21年10月に日本共産党の小池晃書記局長が参院本会議で初めて痴漢の問題を取り上げ、そこで要求した実態調査が実現し(22年)、被害の深刻さが明らかになったもとで策定されたという経過があります。
2023年の刑法改正(7月施行)で不同意わいせつ罪が新設され、迷惑防止条例違反に問われることが多かった痴漢行為が、不同意わいせつ罪を適用される事例が増えたことも、警察、国・自治体の痴漢対策の後押しになっていると思います。
自治体で最も進んでいるのが東京都だと思います。2022年の受験シーズンから都交通局が痴漢対策を始め、女性専用車両の拡大などを行い、23年度から都として「痴漢撲滅プロジェクト」をスタートさせました。痴漢被害調査を実施し、12月に結果が発表されました。
東京都を動かしたのは、日本共産党都議団が20年から21年にかけて痴漢被害アンケートに取り組み、そこに示された深刻な実態を都議会で示して、本腰を入れた対策を都に再三、訴えてきたことが大きな力になったようです。
また、共通テスト・受験シーズンである今現在、鉄道会社や警察、自治体による共通テストなど受験生を狙う痴漢の撲滅・防止キャンペーンが首都圏を始め全国で行われています(内容の是非は別にして)。私たちが取り組み始めた22年1月頃はほとんど見なかったのですが、この2年間ですっかり様変わりした感があります。
今月10日には内閣府が共通テスト受験生向けに、「痴漢に遭ったり目撃したら110番」「痴漢は重大な犯罪です」「痴漢に遭った場合は追試も」とXに投稿。内閣府としては初めてのことで、大きな変化です。
●世論が合流し社会動かす
これらの前進は、直接的には、兵庫・神戸では「東灘区ジェンダーしゃべり場」のアクションと松本さんや私をはじめ共産党県・神戸市議団の論戦、国や東京でも共産党の努力が要因ですが、痴漢を許さない世論が巨大な力になったのは間違いありません。
私たちのアクションは兵庫県関係の鉄道事業者や県警などに向けたものですが、2022年1月の発信は全国に一気に広がり、大きな期待と注目を集めました。その影響で、共通テスト痴漢撲滅の世論が高まり、22年の共通テスト前に「痴漢祭り」がトレンド入り。メディアも取り上げるようになり、私たちと同様のアクションが全国各地で起きます。この頃、通報や抵抗ができない共通テスト受験生を狙う卑劣な痴漢の存在が一挙に世間に知られるようになったことを思い出します。
そして、そもそも痴漢は重大な犯罪であり、撲滅をという世論も高まっていきます。私たちは受験シーズン対策以外にも、痴漢ゼロ・撲滅の立場から、「迷わず110番!」ポスターなど実現したことや議会論戦などを日常的に発信し、しばしば大きな反響を呼びました。
上述のように、県警幹部は「皆さんからの色々な指摘や要望で、われわれ警察も認識が変わってきました」(23年11月30日)、「めざすゴールは同じです」(同12月27日)と語りました。痴漢ゼロめざす私たちのアクションと目標が受け止められ、世論が反映していると思います。
同時に、世論と言った場合、何度も言ってきたことですが、地下鉄御堂筋事件を機に生まれた「性暴力を許さない女の会」の方々の活動以来、懇意にさせていただいいている痴漢抑止活動センターの方々の取り組み、フラワーデモのみなさん、2021年の高校生など日本若者協議会の署名運動等々により作られてきた、痴漢を許さない力強い世論が以前から存在しています。
また、23年11月から首都圏を中心に「#鉄道会社は痴漢対策に本気で取り組んでください」というネット署名運動が起きたようです。一人一人の思いを集めて鉄道会社に求める非常に重要な取り組みだと思います。
共通テストで言えば、19年から20年にかけてSさんらによるセンター試験痴漢防止パトロールに賛同が大きく広がり、その後も行動は続き、今回もかなりの期待と賛同を受けて行動されるようです。
以上述べてきたような世論の全体が合流し、この間、日本社会を動かしてきたのではないでしょうか。その意味で、政府が「痴漢撲滅政策パッケージ」を策定するまでに至ったのは、痴漢を憎み、痴漢をなくそうと行動し声を上げてきた全員の成果だと言えます。
この力でさらに前へ進めたいものです。
●痴漢ゼロめざし アクションを
もちろんそうはいっても、痴漢がすぐに減っていくかというと、そんなに甘くありません。いい施策でも市民の側が手を緩めると予算を減らされてすぐ後退する例を、県議時代にたくさん見ました。
痴漢ゼロのゴールから見ると現時点は、国や自治体の取り組みがやっと始まったばかりというところだと思います。兵庫・神戸も課題はたくさんあります。
痴漢ゼロを実現するために、全国どこでもアクションを広げていただくよう心からお願いするものです。